【自由研究】バニラ・エアで問題なのは「合理的配慮」の有無だけではない

奄美空港バニラ・エアを利用した車椅子の男性がタラップを自力で這い上がったことが問題となっています。

www3.nhk.or.jp

www.huffingtonpost.jp

mainichi.jp

SNS上では補助器具などを用意することが「合理的配慮」にあたるのかが話題になっていたような気がしますが、問題はそれだけなのでしょうか。気になったので少し調べてみました。

【注意】間違ったことを書かないよう注意してますが、私は法律や障害者問題、航空業界の素人ですので、鵜呑みにはしないでください。

障害者差別解消法(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)とは何か

最初に法律と基本方針、Q&Aへのリンクをのせておきます。

障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律 - 内閣府

障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針 - 内閣府

障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律についてのよくあるご質問と回答<国民向け> - 内閣府

目的

目的は法律の第一条に書いてあります。

この法律は、障害者基本法(昭和四十五年法律第八十四号)の基本的な理念にのっとり、全ての障害者が、障害者でない者と等しく、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有することを踏まえ、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本的な事項、行政機関等及び事業者における障害を理由とする差別を解消するための措置等を定めることにより、障害を理由とする差別の解消を推進し、もって全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資することを目的とする。

一文が長いですが、「障害者の基本的人権とその尊厳が守られるように障害を理由とする差別を解消して、全ての国民が共生できる社会を作ろう」ということだと思います。

ちなみに障害者基本法の理念は、障害者基本法の第一条に書いてあります。

障害者基本法:障害者施策 - 内閣府

この法律は、全ての国民が、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念にのつとり、(以下略)

この理念は憲法十三条に書かれた個人の尊重に通じるものです。

すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

つまり、法律の理念の構造としては、憲法十三条(個人の尊重)→障害者基本法第一条(個人の尊重)→障害者差別解消法、というものになります。

何が差別か

障害者差別解消法が差別を解消する法律であることは分かりましたが、何が差別なのでしょうか。

基本方針には次のように書かれており、

  • 不当な差別的取扱い
  • 合理的配慮の不提供

の2つが差別であるとしてます。

法は、後述する、障害者に対する不当な差別的取扱い及び合理的配慮の不提供を差別と規定

この2つは事業者に対する位置付けが異なっています。 不当な差別的取扱いしてはならないとされており、禁止されていますが、合理的配慮の不提供努めなければならないとされ、努力義務です。

不当な差別的取扱い、合理的配慮の不提供とは何か

基本方針には不当な差別的取扱いについてこのように書かれています。

法は、障害者に対して、正当な理由なく、障害を理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否する又は提供に当たって場所・時間帯などを制限する、障害者でない者に対しては付さない条件を付けることなどにより、障害者の権利利益を侵害することを禁止している。

また合理的配慮の不提供についてこのように書かれています。

事業者に対し、その事務・事業を行うに当たり、個々の場面において、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、社会的障壁の除去の実施について、必要かつ合理的な配慮(以下「合理的配慮」という。)を行うことを求めている

これらの文章で問題となるのは正当な理由なく実施に伴う負担が過重でないときだと思います。この基準は法律や基本方針には具体的には書き込まれておらず、対応指針が別に作成されることになっています。

今回の事例と対応指針

まずは今回の事例を確認しましょう。

  1. 関空奄美線では、他の方の補助を受けても自力でタラップを歩いて上り下りできないお客さまから事前に連絡があった際には、搭乗をお断りしていた」
  2. 搭乗拒否の理由はタラップを使用する際の安全上の問題
  3. 事前に連絡しなかったのは門前払いされると思ったから【バニラ・エア車椅子対応問題】木島さん「スタッフが対応できなくても周囲の人に助けを頼むので、搭乗拒否するのやめて」 | キャリコネニュース

今回の事例で問題になっているのは航空機の乗降ですので、国土交通省が出している航空運送業関連の対応指針を見てましょう。

http://www.mlit.go.jp/common/001108694.pdf

今回と似たような例をあげるとこのようになります。

正当な理由がなく、不当な差別的取扱いにあたると想定される事例

  • 安全上の問題などがないにもかかわらず、障害のみを理由に搭乗を拒否する。
  • 同伴者がいないことを理由に、軽度な歩行困難な利用者の搭乗を拒否する。

障害を理由としない、又は、正当な理由があるため、不当な差別的取扱いにあたらないと考えられる事例

  • 合理的配慮を提供等するために必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ、障害者に障害の状況等を確認する。
  • 短時間でのストレッチャーの着脱は不可能であるため、ストレッチャー使用者が希望される搭乗便の機材上の前後の便が満席であること理由に、搭乗便の変更を依頼する。
  • ストレッチャーの取り付け可能な空港が限られているため、搭乗便の変更を依頼する。

過重な負担とならない場合に、提供することが望ましいと考えられる事例

  • 調整可能な範囲で、車いすを使用され、かつ階段の昇降ができない利用者の予約がある場合は、ボーディングブリッジのあるスポット又はリフトカー等を準備する。

ただ、今回にぴったり当てはまる事例はないので、この対応指針だけでは不当な差別的取扱いをしたのか、社会的障壁の除去の実施に伴う負担が過重なのかはわかりません。

結局は今後の検証の結果、差別かどうかが判断されるのだと思います。

【独自解釈】今回の事例は差別なのか

私は今回の事例が差別にあたると思っています。それはストレッチャーや昇降機を用意することは合理的配慮にあたると考えるからです。

まずストレッチャーや昇降機を用意することは過重な負担にあたらず、合理的配慮の範囲内だと考えます。なぜなら、今回の問題の後、バニラ・エアはそれらの補助器具を設置しているからです。本当に過重な負担にあたるのであれば、問題が発生したとしてもそれらの器具を設置することは出来ないのではないでしょうか。

一方、搭乗を拒否したことが不当な差別的取扱いにあたるかは少し微妙な側面があると思います。補助器具がなにも無い状態で、歩けない乗客にタラップを這わせたり、同伴者に車椅子を持ち上げてもらうことに、安全上の問題がある可能性は高いでしょう。しかしその安全上の問題は前述の合理的配慮を行なえば解消されるはずです。

つまり、搭乗拒否は、合理的配慮を行なえば不当な差別的取扱いになりますが、合理的配慮を行わなければ不当な差別的取扱いには当たらない可能性があります。

しかしこれでは合理的配慮を行わないほうが合法的に障害者を拒否でき追加的コストを支払わないで済むということになり、合理的配慮が広がらない可能性があります。

法律の目的を考えれば、合理的配慮がより多くの場面で行われることが望ましいでしょうから、合理的配慮を行なえば搭乗拒否せずにすむ場合に合理的配慮を行わないのは不当な差別的取扱いを行っているのと同様であると考えてもいい気がします。あくまで素人の意見です。この論理には穴が多くあると思います。

今後の話

バニラ・エア奄美空港のストレッチャーと昇降機を導入したそうですので、今後搭乗拒否をしたら、禁止されている不当な差別的取扱いをしたことにおそらくなります。

まとめ

  • 障害者差別解消法の差別は合理的配慮の不提供だけでなく不当な差別的取扱いも含む
  • 不当な差別的取扱いは禁止、合理的配慮は努力義務
  • 今回の事例が差別であるかどうかは今後の検証によって明らかになるはず
  • 私個人の意見では階段を歩けないことを理由に搭乗を拒否したことが禁止されている不当な差別的取扱いにあたるかは微妙、ストレッチャーや昇降機を用意することは努力義務の合理的配慮の範囲
  • 奄美空港にもストレッチャーと階段昇降機が設置されたので、今後は搭乗できるはず