自動運転の新基準は日本政府の過剰規制じゃない

2017年10月13日にこのような記事が公開されました。

www.nikkei.com

この記事の「自動運転、手離し65秒で手動に」というタイトルをぱっと見て、

それって「自動運転」じゃないじゃん!日本のお役所がまた面倒な規制をかけちゃって……

と思った方も多いと思います。

自分も気になって調べてみましたが、結論から言えばその考えはおそらく誤解です。 この新基準はむしろ規制緩和(正確に言えば時代に合わせた規制の適正化)といってもいいかと思います。

ここでは、新基準の背景や意義について調べた内容を説明していきます。

何を調べるのか

まず調べる点をはっきりさせておきます。

  1. 「手離し65秒で手動に」という規制は過剰なのではないか
  2. この規制は国際的にみても過剰なのではないか

ということを思われた方が多いと思います。それらの推察が合っているのか調べてみます。

記事をしっかり読んでみる

まずはタイトルだけではなく、記事をちゃんと読むことにします。それを要約すると、

  • 自動運転車に関する初の安全基準導入
  • 手放し運転による事故防止が狙い
  • 国際基準に合わせ保安基準を告示
  • 65秒以上手放しで手動に切替
  • 自動駐車は10km/h以下で走行
  • 今後自動運転による車線変更に関する基準を策定

となるでしょうか。ここで大事なのは国際基準に合わせという部分です。 つまり、日本政府が国際的にみても過剰な規制をかけたわけではなく、国際基準がそういう規制になったので日本も合わせた、ということです。

これで、最初に挙げた論点のうち、国際的にみて過剰な規制なのではないかという点はどうも違うぞ、ということが分かりました。

では、次に「手離し65秒で手動に」なるのは過剰規制なのではないか、という点についてさらに調べていきます。

基準改定前の状態を確認

そもそも、改定前の国際基準では上記で述べたような自動操舵機能を時速10km超での使用することが以下のように禁止されています。

Whenever the Automatically Commanded Steering function becomes operational, this shall be indicated to the driver and the control action shall be automatically disabled if the vehicle speed exceeds the set limit of 10 km/h by more than 20 per cent or the signals to be evaluated are no longer being received.

自動命令型かじ取機能が作動しているときは常に、本機能は運転者に表示されるものとし、また車両速度が設定限度の時速10km/hを20%以上超えた場合又は評価信号を受信しなくなった場合に、当該機能は自動的に無効になるものとする。

いやレーンキープアシストシステムやプロパイロットは使われてるじゃん、と考えると思います。なぜ日本でそれらの機能が使えるかと言えば、国土交通省が国際基準の適用を猶予しているためです。

response.jp

つまり、基準改定前は、完全自動運転を議論する以前の問題として自動ハンドル操作さえ国際基準で許されないが国土交通省が特別に許している、という状態になります。

基準の中身

今回改定の基準の中身について調べていきます。

最初の前提知識となる自動運転のレベルの話から始めます。

自動運転のレベルについて

聞いたことがある方も多いかと思いますが、自動運転はシステムの介入度や責任分担によってレベル0からレベル5までの6段階に分類されています。下の2つの資料でサクッと説明されています。

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/dai71/siryou3-2.pdf

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http://www.forum8.co.jp/fair/image/design-fes2016/day1/lecture02.pdf

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ざっくり言うと、事故が起きたときにレベル2まではドライバーが責任を取るが、 レベル3以上はシステムが責任を取る、ということです。

現在、日本国内で実用化されているのはレベル2までです。 レベル1の具体的な機能としては自動ブレーキやアダプティブクルーズコントロール(ACC)、レーンキープアシストシステム(LKAS)、レベル2はセレナのプロパイロットなどが挙げられます。

基準の前提と対象

このレベルの話を踏まえて基準の中身を確認します。

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先程のpdfには上で示したスライドがあります。

まず、今回の基準の前提条件は、レベル2です。つまりドライバーが責任を持つような「自動運転」を想定しています。

その前提の元で、運転支援システムを5つの種類、7つのカテゴリーに分けています。 その中で今回の基準化の対象になっているのは補正操舵のCorrective、自動駐車等のCategory A、ハンドルを握った状態での車線維持のCategory B1です。 それ以外は基準化さえされていません

なんとなく、分かってきたでしょうか。最初の記事で紹介された基準はハンドルを握った状態での車線維持を行える自動車に対して適用される基準なのです。 逆に言えば、その自動車で使用される自動運転技術はハンドルを握っていないと運転できないようなレベルである、少なくともハンドルを離すことは想定されていないということです。例えば、日産セレナのオートパイロットのようなものです。

車線維持をしてくれるが手離し運転はできないような自動車の国際的な安全基準は今までないどころか、上述のとおり自動操舵機能自体が禁止されていました。 しかし、それでは技術開発の進展に追いついていないということで、新たに手離しをしない車線維持機能等を認めその基準を作ることにしたのです。

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車線維持機能を持つ自動車が満たすべき要件の概要は上のスライドにあります。車線維持機能の性能基準やドライバーがシステムをON/OFFできるようにすることに加えて、運転者がステアリングを握っていることを検知する機能を備えることが要件とされています。

それは手離し運転を想定していない自動車である以上当然のことと言えます。現状でも自動運転機能を過信して事故を起こすケースが起きており、そのような事故を防止する機能は確かに求められています。

そのために、手離しを防ぐハンズオフ警報を義務化し、手放しから最大30秒で警報表示と警報音が鳴り、その警報音が30秒以上続く場合にはそこから5秒以上の緊急信号で警報したうえでシステムがオフになるようにしました。確かにこの数値を合計すると65秒になり、最初の記事の数値と一致します。

報道発表資料や元の国際基準を見てみる

新聞の報道は省庁が出す報道発表資料を元にしている場合が多いので、その元ネタを探してみます。それが下のページです。

www.mlit.go.jp

このページの別紙の中に次のような文言があります。

自動操舵機能のうち、補正操舵、自動駐車、ハンドルを握った状態での車線維持機能を有する自動車は、それぞれ協定規則第 79 号に規定された各機能についての要件に適合しなければならないこととする。

じゃあその協定規則第79号ってなんだ、という話になりますが、それが下の文書です。

http://www.unece.org/fileadmin/DAM/trans/doc/2017/wp29/ECE-TRANS-WP29-1129e.pdf

これの日本語版も一応探したのですが、ありませんでした。改定前の日本語仮訳は下のページにあります。

自動車:「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示」(平成14年国土交通省告示第619号)において技術的に引用している協定規則の日本語仮訳 - 国土交通省

その中には先程述べたCategoryの話や基準が書いてあります。その一部を紹介します。日本語訳は私が訳した拙いものです。まず定義として

2.3.4.1.2. "ACSF of Category B1" means a function which assists the driver in keeping the vehicle within the chosen lane, by influencing the lateral movement of the vehicle.

2.3.4.1.2. 「カテゴリーB1の自動操舵機能」は自動車の横方向の動きに影響を与えることによって、自動車をあるレーンの中に維持するようにドライバーを支援する機能である。

とあり、カテゴリーB1が満たすべき条件の中に次のような記述があります。

5.6.2.2.5. When the system is active and in the speed range between 10 km/h or Vsmin, whichever is higher, and Vsmax, it shall provide a means of detecting that the driver is holding the steering control.

(省略)

If, after a period of no longer than 30 seconds the driver is not holding the steering control, at least the hands or steering control in the pictorial information provided as optical warning signal shall be shown in red and an acoustic warning signal shall be provided.

The warning signals shall be active until the driver is holding the steering control, or until the system is deactivated, either manually or automatically.

The system shall be automatically deactivated at the latest 30 seconds after the acoustic warning signal has started. After deactivation the system shall clearly inform the driver about the system status by an acoustic emergency signal which is different from the previous acoustic warning signal, for at least five seconds or until the driver holds the steering control again.

5.6.2.2.5. (自動操舵)システムが動作しており、かつ速度が10km/hもしくはVsmin(システムの設計最低速度)からVsmax(システムの設計最高速度)以下のとき、そのシステムはドライバーがハンドルを保持していることを識別する手段がなければならない。

(省略)

ドライバーがハンドルを保持していない状態が30秒続かないうちに、手かハンドルのアイコンのどちらかが光って警告信号を示し、かつ警告音が鳴らなければならない。(注:カテゴリーB1の自動車では手とハンドルを示すアイコンをつける必要がある。)

ドライバーがハンドルを握るか、自動操舵システムが手動か自動かによらず無効にされるまで、その警告信号は動作していなければならない。

警告音が鳴りはじめてから30秒以上経ったあと、自動操舵システムは自動的に無効にならねばならない。 システムの無効化は先程の警報音とは異なる警報音によってドライバーに知らされなければならず、その警報音は少なくとも5秒間続くかドライバーがハンドルを握るまで続く必要がある。

確かに先程のスライドと同様のことが書いてあります。

今の車はどうなるのか

では、いま販売されている自動車は規制の対象になるのでしょうか。それは最初の記事に書いてあるとおりです。

2019年10月以降の自動運転機能を備えた新型車が対象。現在販売されている車種は21年4月から適用し、中古車は対象外とした。

今後の基準作成の方向性

ここまでで、今回の基準は手放しを前提としない車線維持機能に関する基準であることが分かりました。 では、自動車線変更の基準はどうなるのでしょうか。今後の基準作成の方向性が次のスライドに示されています。

https://www.unece.org/fileadmin/DAM/trans/doc/2017/wp1/ECE-TRANS-WP1-Automated-Vehicles-Presentation-5e.pdf

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Category C(ウインカー起点の自動車線変更)を先に基準化し、次にCategory B2(手放し車線維持)とCategory D(システム判断の自動車線変更)、Category E(連続自動操舵)の議論をレベル3, 4の議論と共に行うそうです。

確かに、手放し運転の安全基準を決めるより、自動車線変更の安全基準を決めるほうが比較的簡単そうですもんね……

手放し運転だけどドライバーは運転に集中し、事故の責任はドライバーが取るっていうのは現実的なんだろうか……?

なぜ誤解が生じるか

なぜ最初のような誤解が生じたのでしょうか。主に2点の要因があると思います。

自動運転=レベル4の自動運転のイメージがついている

自動運転と聞くと、レベル4のシステムが責任を取る自動運転の話を考えがちですが、今回、基準の対象になっているのはレベル2の現時点で実用化されている程度の自動運転車です。 レベル4の自動運転を想像すると「人がハンドルを握るなんて!」と思いがちですが、「セレナは手放し運転だめだよ」と考えれば、納得できるのではないでしょうか。

元の記事にCategory B1の話がない

そもそも、基準の対象が手放しを前提としない自動車であるので、手放し運転を規制するのは当たり前です。 その前提条件や、今回の基準の先に手放しも出来るような自動車の基準の議論も進んでいることも書けば誤解が少なくて済んだのではないでしょうか。

まとめ

  • 元々国際基準では時速10km/h以上の自動操舵機能は禁止
  • 技術の進歩に伴い、新たに自動操舵機能を認めることになった
  • その第1弾としてハンドルを握った状態の車線維持機能等を基準化
  • その要件の1つがハンズオフ警報
  • 今後は自動車線変更などの基準化が進む
  • レベル3以上や手放し運転の基準化はさらに先の話

追記:システムがオフになるのは危険では?停車すべきでは?(個人的推測多)

色々反応を見ていて、なるほどなあと思ったのが

65秒経ったらシステムが止まるのは危険では?停車すべきなのでは?

という意見です。確かにそうすべきなのではと思ったのですが基準化をするには色々課題がありそうです。

65秒以内に車を停止させることは禁止されてない

まず、基準では65秒(最大30秒待機+30秒警告+5秒最終警告)でシステムを停止することを義務づけています。 ですが、システムが動いている間にシステムで車を停止させることは禁止されていません。 つまり、デッドマン装置のような機能が必要だとメーカーが判断すれば、手放し開始から65秒以内に車を停止させるようにすればいいはずです。 現状の自動車の減速度であれば、65秒以内に100km/hや120km/hから0km/hまでブレーキをかけることは技術的には当然出来るでしょう。

なぜデッドマン装置は基準化されないのか

では、デッドマン装置も基準化すればいいじゃないかという話になりますが、それは結構難しそうです。

基準を決定する人たちも決して無視しているわけではなく、デッドマン装置を検討している節があります。

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上のスライドには危険最小化制御とあるのがデッドマン装置に該当する機能だと考えられます。 危険最小化制御の説明には「ドライバーが警告に応じない場合には、車を安全に停止させること」とあります。

ここで難しいと感じたのが安全にという部分です。 ただ車を停止させれば安全と呼べるのでしょうか。 例えば高速道路の追い越し車線に停止してしまっても良いのでしょうか。 だからと言ってCategory B1では自動車線変更を想定していないのですから、走行車線や路肩に車線変更して停止するというのも難しいそうです。

何をもって安全と呼べるかは様々な視点からの意見が必要となり、必ずしもコンセンサスが取れているとは言えないと思います。 だからこそ、今回の基準ではデッドマン装置(危険最小化制御)の基準化を見送ったのではないでしょうか。

追記まとめ

  • デッドマン装置は禁止されているわけじゃない(はず)
  • 基準化はまだ難しそう

調査輪講反省&感想

調査輪講の発表が終わったので、その反省をします。

調査輪講とは何か?

自分の所属しているコースだと修士1年の夏学期にある、テーマを決めてそれに関連する論文を読み、先生方と学生の前で25分(+質疑応答8分)を使い発表するものです。 テーマは自分の研究内容と完全に同じではいけません。 ただ、少しずれていれば良いということになっています。

準備しなければいけないものは、発表で使用するスライドと当日先生や学生に配布する発表資料(2カラム、8ページ)です。

自分の進め方

  1. 5月頃にタイトルを決める必要があるので、調べるテーマを「有線通信の研究動向」といった風にざっくりと決める。ちなみに私の研究テーマは(ざっくりいうと)「有線通信の高速化」である。
  2. とりあえず日程を決定。発表日は金曜日なので、その週の月曜日に研究室内での練習発表をすることにして、その前2週間を使って調査しようと決める。つまり全体で3週間使うことを想定していた。
  3. しかし、家族の急用や体調不良によって、最初の1週間が使えなくなり予定が狂う。この段階で調べる論文や詳細なテーマは決まっていない。
  4. なんとか体調を直して、輪講に立ち向かう。テーマを決めるために、ISSCCInternational Solid-State Circuits Conference、回路系のトップカンファレンス)のTrendsなどを見て有線通信の研究トレンドをつかむ。どうも「高速化」と「低消費電力化」の2パターンがあるらしい。「高速化」だと自分のテーマとかぶる可能性があるので、「低消費電力化」のほうを調査テーマとする。
  5. 低消費電力といってもパターンがありすぎるので、ISSCCのTrendから有名なパターンを調べる。どうも4つぐらいあるらしい?
  6. その4つを中心にIEEE Xploreを使ってとにかく調べていき、めぼしい論文を拾ってくる。
  7. 種類が違う低消費電力手法で良さそうなやつを4つぐらい探してくる。
  8. ここまでで1週間かかる。明らかに練習に間に合わないので、練習日を水曜に移動し、土日返上で作業することを決定する。
  9. よく考えると、学生は有線通信の基礎的な知識を有していないことに気づく。つまり発表の前半は基礎的な知識の説明をして、後半は最新研究(今まで調べた研究)という展開にする必要がありそう。
  10. 基礎的な知識のほうは、等化器と評価手法(eye diagram と bathtub curve)というものがある、というのは前から説明したかったので、その説明をすることにした。
  11. 配布資料をとにかく書きすすめる。2カラムであることもあり、これがとにかく終わらない。図を貼っても大して文書は伸びない。つらい。
  12. あまりに進捗がやばいので、月曜から水曜(練習日)にかけてデスマーチを敢行。平均睡眠時間3時間で強行突破することになる。結構鬱気味になる。
  13. 結局配布資料が最終的に出来上がったのは水曜日の早朝3時。ここから(少しは手をつけていたとはいえ)ほとんど手付かずのスライド作成に取り組む。
  14. 何だかんだ水曜日の12時までにはスライドが出来上がる。基本的には配布資料の図のコピペでOKなので、そんなに難しくはなかった。
  15. 発表練習。意外とたたかれなかったが、個人的にはあまり良くない出来だったので、いただいたアドバイスなどを活かしてスライドと配布資料を修正する。
  16. よく考えると前半と後半のつながりが薄いことが発表練習などで分かる。しかし、今更内容を変えることもできないのでこのまま発表に望む。
  17. 前日の17:00に資料提出。これで資料の編集をしなくて良くなったので、ほっと一安心。
  18. 発表。声も大きく発表することができた(超重要)のは良いポイントだった。先生や博士の学生から来る質問は単純だが鋭い質問が多く、なかなか充分な回答をするのが難しかった。発表終了後は達成感に包まれる。

反省点

良かった点

  1. 自分が研究している分野の周辺分野の知識が多少増えることによって、自分の研究分野の立ち位置に対する理解が少し深まったような気がする。
  2. 調査していくうちに、分野の面白いポイントがなんとなく分かってきて、分野のことが好きになったような気がした。ちゃんと調べて知識が増えればその分野を好きになれる性格なのかもしれない。
  3. 睡眠時間3時間を3日続けるだけで、体調不良になったのは意外だった。睡眠時間を削ってはいけないことを体感した。睡眠時間を削るカルチャーの業界には行かないようにしようと思った。

良くなかった点

  1. もう少し早めに論文調査を進めておくべきだった。調査することによってテーマに対する理解が深まり、より適切な調査ができるようになるという良い回転をもっと早い段階で生み出すほうが良かった。
  2. 前半と後半のつながりをもっと意識すべきだった。前半に等化器の話をどうしてもしたかったので、その話で結構時間を割いたが、後半で等化器は1つの論文でしか出てこなかったので、前半と後半のつながりが薄くなってしまった。実はテーマを有線通信の高速化にしていればもっと等化器の話との繋がりをつくれたのかもしれないと思った。

まとめ

苦しいことも多くあり、もう一度これをやれと言われたら辛いなあと思いますが、意外と楽しい調査輪講でした。

【自由研究】バニラ・エアで問題なのは「合理的配慮」の有無だけではない

奄美空港バニラ・エアを利用した車椅子の男性がタラップを自力で這い上がったことが問題となっています。

www3.nhk.or.jp

www.huffingtonpost.jp

mainichi.jp

SNS上では補助器具などを用意することが「合理的配慮」にあたるのかが話題になっていたような気がしますが、問題はそれだけなのでしょうか。気になったので少し調べてみました。

【注意】間違ったことを書かないよう注意してますが、私は法律や障害者問題、航空業界の素人ですので、鵜呑みにはしないでください。

障害者差別解消法(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)とは何か

最初に法律と基本方針、Q&Aへのリンクをのせておきます。

障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律 - 内閣府

障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針 - 内閣府

障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律についてのよくあるご質問と回答<国民向け> - 内閣府

目的

目的は法律の第一条に書いてあります。

この法律は、障害者基本法(昭和四十五年法律第八十四号)の基本的な理念にのっとり、全ての障害者が、障害者でない者と等しく、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有することを踏まえ、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本的な事項、行政機関等及び事業者における障害を理由とする差別を解消するための措置等を定めることにより、障害を理由とする差別の解消を推進し、もって全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資することを目的とする。

一文が長いですが、「障害者の基本的人権とその尊厳が守られるように障害を理由とする差別を解消して、全ての国民が共生できる社会を作ろう」ということだと思います。

ちなみに障害者基本法の理念は、障害者基本法の第一条に書いてあります。

障害者基本法:障害者施策 - 内閣府

この法律は、全ての国民が、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念にのつとり、(以下略)

この理念は憲法十三条に書かれた個人の尊重に通じるものです。

すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

つまり、法律の理念の構造としては、憲法十三条(個人の尊重)→障害者基本法第一条(個人の尊重)→障害者差別解消法、というものになります。

何が差別か

障害者差別解消法が差別を解消する法律であることは分かりましたが、何が差別なのでしょうか。

基本方針には次のように書かれており、

  • 不当な差別的取扱い
  • 合理的配慮の不提供

の2つが差別であるとしてます。

法は、後述する、障害者に対する不当な差別的取扱い及び合理的配慮の不提供を差別と規定

この2つは事業者に対する位置付けが異なっています。 不当な差別的取扱いしてはならないとされており、禁止されていますが、合理的配慮の不提供努めなければならないとされ、努力義務です。

不当な差別的取扱い、合理的配慮の不提供とは何か

基本方針には不当な差別的取扱いについてこのように書かれています。

法は、障害者に対して、正当な理由なく、障害を理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否する又は提供に当たって場所・時間帯などを制限する、障害者でない者に対しては付さない条件を付けることなどにより、障害者の権利利益を侵害することを禁止している。

また合理的配慮の不提供についてこのように書かれています。

事業者に対し、その事務・事業を行うに当たり、個々の場面において、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、社会的障壁の除去の実施について、必要かつ合理的な配慮(以下「合理的配慮」という。)を行うことを求めている

これらの文章で問題となるのは正当な理由なく実施に伴う負担が過重でないときだと思います。この基準は法律や基本方針には具体的には書き込まれておらず、対応指針が別に作成されることになっています。

今回の事例と対応指針

まずは今回の事例を確認しましょう。

  1. 関空奄美線では、他の方の補助を受けても自力でタラップを歩いて上り下りできないお客さまから事前に連絡があった際には、搭乗をお断りしていた」
  2. 搭乗拒否の理由はタラップを使用する際の安全上の問題
  3. 事前に連絡しなかったのは門前払いされると思ったから【バニラ・エア車椅子対応問題】木島さん「スタッフが対応できなくても周囲の人に助けを頼むので、搭乗拒否するのやめて」 | キャリコネニュース

今回の事例で問題になっているのは航空機の乗降ですので、国土交通省が出している航空運送業関連の対応指針を見てましょう。

http://www.mlit.go.jp/common/001108694.pdf

今回と似たような例をあげるとこのようになります。

正当な理由がなく、不当な差別的取扱いにあたると想定される事例

  • 安全上の問題などがないにもかかわらず、障害のみを理由に搭乗を拒否する。
  • 同伴者がいないことを理由に、軽度な歩行困難な利用者の搭乗を拒否する。

障害を理由としない、又は、正当な理由があるため、不当な差別的取扱いにあたらないと考えられる事例

  • 合理的配慮を提供等するために必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ、障害者に障害の状況等を確認する。
  • 短時間でのストレッチャーの着脱は不可能であるため、ストレッチャー使用者が希望される搭乗便の機材上の前後の便が満席であること理由に、搭乗便の変更を依頼する。
  • ストレッチャーの取り付け可能な空港が限られているため、搭乗便の変更を依頼する。

過重な負担とならない場合に、提供することが望ましいと考えられる事例

  • 調整可能な範囲で、車いすを使用され、かつ階段の昇降ができない利用者の予約がある場合は、ボーディングブリッジのあるスポット又はリフトカー等を準備する。

ただ、今回にぴったり当てはまる事例はないので、この対応指針だけでは不当な差別的取扱いをしたのか、社会的障壁の除去の実施に伴う負担が過重なのかはわかりません。

結局は今後の検証の結果、差別かどうかが判断されるのだと思います。

【独自解釈】今回の事例は差別なのか

私は今回の事例が差別にあたると思っています。それはストレッチャーや昇降機を用意することは合理的配慮にあたると考えるからです。

まずストレッチャーや昇降機を用意することは過重な負担にあたらず、合理的配慮の範囲内だと考えます。なぜなら、今回の問題の後、バニラ・エアはそれらの補助器具を設置しているからです。本当に過重な負担にあたるのであれば、問題が発生したとしてもそれらの器具を設置することは出来ないのではないでしょうか。

一方、搭乗を拒否したことが不当な差別的取扱いにあたるかは少し微妙な側面があると思います。補助器具がなにも無い状態で、歩けない乗客にタラップを這わせたり、同伴者に車椅子を持ち上げてもらうことに、安全上の問題がある可能性は高いでしょう。しかしその安全上の問題は前述の合理的配慮を行なえば解消されるはずです。

つまり、搭乗拒否は、合理的配慮を行なえば不当な差別的取扱いになりますが、合理的配慮を行わなければ不当な差別的取扱いには当たらない可能性があります。

しかしこれでは合理的配慮を行わないほうが合法的に障害者を拒否でき追加的コストを支払わないで済むということになり、合理的配慮が広がらない可能性があります。

法律の目的を考えれば、合理的配慮がより多くの場面で行われることが望ましいでしょうから、合理的配慮を行なえば搭乗拒否せずにすむ場合に合理的配慮を行わないのは不当な差別的取扱いを行っているのと同様であると考えてもいい気がします。あくまで素人の意見です。この論理には穴が多くあると思います。

今後の話

バニラ・エア奄美空港のストレッチャーと昇降機を導入したそうですので、今後搭乗拒否をしたら、禁止されている不当な差別的取扱いをしたことにおそらくなります。

まとめ

  • 障害者差別解消法の差別は合理的配慮の不提供だけでなく不当な差別的取扱いも含む
  • 不当な差別的取扱いは禁止、合理的配慮は努力義務
  • 今回の事例が差別であるかどうかは今後の検証によって明らかになるはず
  • 私個人の意見では階段を歩けないことを理由に搭乗を拒否したことが禁止されている不当な差別的取扱いにあたるかは微妙、ストレッチャーや昇降機を用意することは努力義務の合理的配慮の範囲
  • 奄美空港にもストレッチャーと階段昇降機が設置されたので、今後は搭乗できるはず

木を見て森も見よ(大学院の会計の授業を受けての感想)

【注意】これはポエムです。

2017年度のS1タームに経済学研究科で開講されていた入門レベルの企業会計の授業を受けてきました。自分なりに面白かったのでその感想をつらつら書いていきます。

1. 会計は意外と演繹的

会計は多くの仕訳を覚えていくだけで面白いのかなあと思っていたこともありました。

実際そういう側面があることは否めないのですが、大学院の授業ということで各仕訳が採用されている趣旨も授業で取扱いました。またそれらの仕訳の趣旨が場当たり的なものではなく、発生、実現、対応の3原則や保守主義などの会計的な原則や主義に基づいていることを知りました。その意味で会計は意外と演繹的なのだと思いました。

2. 会計は「伝える」ことが目的

会計というと金勘定のイメージが強いかもしれません。

しかし国際標準の会計基準であるIFRS(International Financial Reporting Standards、国際財務報告基準)で、「財務報告」という言葉が使われていることからも分かるように、会計(財務会計)の目的は投資家や利害関係者に情報を「伝える(報告する)」ことによって適切な投資意思決定や利害調整を行えるようにすることです。

授業でも投資家がその情報を受け取ることによりどのような判断をするかまでを考えて、会計基準について話していたのが印象的でした。

3. 細部が重要

会計は細部が重要です。一般の人が知らないようなアドバンスドな細部が利益を大きく変化させてしまうことがあります。

例えば減損会計は簿記2級の商業会計では扱わないアドバンスドな内容ですが、巨額損失の大部分はこの減損という仕組みに由来していることが多いです。

また最近話題の「のれんの減損」はこの減損会計の応用版として登場します。のれんは日本基準、米国基準、IFRS会計基準の差とも絡んで面倒な論点となっていますが、利益に重大な影響を与えます。

さらに税効果会計も企業行動や利益に大きな影響をおよぼしますが、これもまた簿記2級では出てこない内容です。

このようにアドバンスドな細部が利益に重大な影響を及ぼすことがあり、細かい会計規則とその意味を覚えることも重要となることがあります。

4. システム全体で見ることも大切

ただしいくら細部が大事だからといっても、時にはシステム全体を見なければいけないことも再認識しました。

会計は会計基準だけでなりたっているわけではなく、税務や監査、証券市場の自主規制、投資家の投資リテラシーなどの様々なことがらが絡んでいます。

会計上である問題が起きたときに、会計基準だけでなんとかしようとするのではなく(当然その努力は必要なのですが)、周囲の環境も含めて変えていくことが必要なのではないかと思いました。「木を見て森を見よ」です。

5. 会計は変化する

複式簿記が出来たのは約500年前のことと言われており、会計はそれからあまり変化していないとも言われていたりします。

しかし実際には、時代に応じて会計は断続的に変化していることを理解しました。最近の主な変更として、ほんの10年前に減損会計が導入されたということを知り、意外と変わっていくのだなあと思いました。

将来も情報通信技術の進化やグローバル化の進展によって会計基準や監査、税務などが変化をしていくことになると考えています。

6. 会計は人生を左右する

会計で計算される利益が企業の実力を適切に表すものとなることの重要性を改めて認識しました。企業の価値が大きく評価され過ぎたら…バブルが起きてバブル崩壊後の経済に大きな悪影響を及ぼすでしょう。逆に企業の価値が小さく評価され過ぎたら…不要なリストラが行われ、本来悲しむ必要がなかった従業員や家族の生活を悪化させてしまうかもしれません。このように会計は人生を左右するものであることを強調されていたことが印象に残りました。

まとめ

全体を通じて、自分が受けた大学院の企業会計の授業は面白かったです。財務諸表を作成し監査する側の立場から学ぶ普段の会計士の講義も良いのですが、微妙に異なる視点、つまり基準の作成者や会計情報を利用する人の視点から会計について学ぶことができたのは良かったです。

私が公認会計士を目指す18の理由

みなさま、卒論の進捗いかがでしょうか。私は第1稿をなんとか書き上げたところです。

ところで、私は公認会計士を目指して勉強することにしましたので、初心を忘れないためにもなぜ公認会計士を目指すことにしたのかをつらつらと書いて行きます。

今後やりたいこと

1. 好きなことのプロフェッショナルになりたい

中学生の頃から経済と数字が好きでした。学部は工学部でしたが、大学生の間も経済への関心が薄れることがほとんどありませんでした。親や友人からも、「経済が好きなんだね」と言われます。その好きなことを極めて職業に出来れば幸せなんじゃないかと思いました。

2. 好きなことを極められないのが苦痛

1.の裏返しです。技術職に就職すると勉強すべきことは経済ではなく技術になってしまいます。もちろん独学で経済を学ぶことは出来ますが、独学にはやはり限度があり、プロの方を超えることは難しいです。好きなのに得意じゃないことが出来てしまうのは、自分の中でもどかしく許せない気持ちになってしまう気がしました。

3. 様々な企業のお金、人、物、サービスの動きを知りたい

監査法人に入れれば、色々な企業のお金の流れはもちろんその流れを支えるお金、人、物、サービスの動きを知ることが出来ると思っています。社会や企業に対する好奇心が強いほうだと思うので、それは非常に面白いのではないかと期待しています。

4. 経済に強く結びついて貢献できる仕事につきたい

公認会計士のビジネスフィールドは経済に強く結びついて貢献できる仕事が多いです。自分は経済・社会に貢献したいという志向が比較的強い気がしているので、興味深い仕事が出来るのではないかと思っています。

5. どちらかと言えば従業員ではなく経営側に回りたい

日本でも今後アメリカのように従業員と経営側の格差が広がると考えられる。そうなったときに備えて、自らに適性があれば経営側に回りたいと考えています。

6. 長期間努力して成果を出した経験が欲しい

大学入試も本気で勉強したのは1ヶ月程度でしたし、気象予報士も数ヶ月しか勉強せずに受かってしまいました。1年以上努力を続けて成果を出した経験に乏しいので、そのようなことを経験したいです。

7. 経営の力で半導体産業を救いたい

半導体産業は今でもハイテク産業であり、重要な知識集約型産業です。半導体の設計は知的財産の塊であり、製造は人件費の少ない先進国向けの製造業です。日本の生産性を引き上げるためには半導体産業が復興することが重要であると考えています。

日本の半導体産業が衰退してしまったのは、製造技術、設計技術が劣っているからではなく、それらをマネジメントする能力が低かったからではないか、それを解決するのは技術を支える経営の力なのではないかと考えています。

8. 東京で仕事がしたい

3年生から4年生の間に東京で一人暮らしをしていましたが、東京はいい街です。できれば東京で仕事ができたらいいなあと思っています。

今まで経験してきたこと

9. 色々な団体の会計をしてきて楽しかった

大学生のときに計3団体の会計を担当しました。面倒なこともたくさんありましたが、組織のお金の動きが詳細に分かり、さらにそこから人や物の動きが見えることが非常に面白かったです。監査法人に入れば、仕事としてこのようなことが出来るのではないかと期待しています。

競争環境

10. 理系(数字が強い人)は重宝される

公認会計士では理系(数字に強い人)が重宝されるそうです。自分が数字にとても強いとは思えないのですが、理系なので文系の人よりは強いのかなと思います。

11. エンジニアは経営に関わりにくい

技術者として就職すると経営には関わりにくいそうです(日立の元社長は工学部出身なので、必ずしもそうではないような気もしますが)。会計士の資格を取ったほうが経営に関わりやすいのかなと思います。

12. 人材の流動性が高く、かつニーズが強い資格

会計士のマーケットは人材の流動性が高く、また全体的に需要が高いマーケットだと言われています。1つの企業に定年まで勤められるという意味での安定性もあると思いますが、市場価値(とはなんぞやという議論もあるがとりあえず置いといて)を高めて転職しやすくするという方向での安定性の確保のやりかたもあるのかなと思います。

13. 1つの技術・分野に依存しなく、比較的安定している

1つの技術に集中していると、技術の栄枯盛衰に左右されますが、会計士の業務(特に監査業務)は株式会社が存在する限りは仕事が存在するので比較的安定しています。ポートフォリオバランスが取れるとも言えるのかもしれません。

14. 日本人が求められているグローバルな市場?

日本市場は基本的に縮小していくのでグローバルに活躍したいので思っているのですが、日本人が必要とされていない市場には出たくはありません。日本国内の市場は縮小しますが、日本企業はM&Aなどを通して海外市場に進出しており、その監査を行う日本人会計士もグローバルに活躍できる余地があるのではないかと考えています。

あまり向いていない(ような気がする)こと

以下の3項目を避けるために会計士を目指すという少し後ろ向きな理由。

15. 面接にウェイトがおかれた就活

コミュ障なので、面接は向いていません(多分)。試験のほうが得意なので、試験で就職先がほぼ確保出来る資格は魅力的です。

16. 営業

コミュ障だk(ry 普通に文系就職したら即死する。

17. ものづくり

ものを作るよりも何かを知るほうに興味が向いている気がします。工学や技術分野ではものを作ってなんぼなので、ものを作ることへの興味が薄いのは致命的かもしれません(悲観的すぎるかな?)。

おまけ

18. 17個も理由が思い浮かぶのに挑戦しなかったら一生後悔する

公認会計士になりたい理由が17個もサクッと出てきたのに、挑戦しなかったら一生後悔する気がします。

まとめ

色々書いてきましたが、1番の理由は経済と数字が好きだからですね……

意識が高いことを書いてきましたが、試験に受からないと戯言になってしまうので、道のりは厳しいと思いますが、頑張って勉強して2018年度の公認会計士試験に合格したいと思います。

半導体の入門者が世界半導体ランキングについて調べてみた(2/2)

前回に引き続き、半導体世界ランキングに出てくる企業について調べてみた。今回は11位から20位まで。

nakachan.hatenablog.jp

11位 STMicroelectronics(スイス)

欧州のSTMicroelectronicsが11位。アナログ・車・マイコンが稼ぎ頭。デジタル製品の収益性が問題。

STMicroelectronics | Investor Information | Investor Relations

12位 Infineon Technologies(ドイツ)

1999年にシーメンスから分離独立して誕生した半導体専業メーカー。自動車向け半導体世界第2位、パワー半導体世界第1位。売上も自動車向けとパワー半導体で7割以上を占める。

www.infineon.com

13位 Apple(アメリカ)

まさかのAppleが登場。半導体を他社向けに販売しているのではなく、自社向けのiPhoneiPadに使用される「A◯チップ」の設計を行なっている。iPhoneの販売台数が膨大であるため、それに必要な半導体の個数も多くなりトップ20入りを果たした。

investor.apple.com

14位 MediaTek(台湾)

消費者向けSoC大手のMediaTekスマホタブレットウェアラブル端末、TV、DVD向けのチップや、Wi-FiBluetoothGPSNFCなどの無線チップなどの設計を行っている。

www.mediatek.com

15位 ルネサスエレクトロニクス(日本)

自動車向け半導体メーカー世界第3位(1位はNXP Semiconductors、2位はInfineon Technologies)。日立、三菱電機NECのSoC部門を分離して誕生した。2013年に産業革新機構に救済され、経営再建中。現在の主力は自動車・産業用向けマイコン。弱みのアナログ半導体を補完するため、米半導体メーカーのインターシルを2016年9月に買収することを発表した。

www.renesas.com

16位 ソニー(日本)

CMOSイメージセンサー世界最大手(金額ベース)。アップルやサムスン、中国のスマホメーカーなど世界中のスマホメーカーにイメージセンサーを提供している。

www.sony.co.jp

17位 SanDisk(アメリカ)

NANDフラッシュメモリ大手のSanDisk東芝と合弁を組んでいる。2016年5月にHDD大手Western Digitalに買収された。

www.sandisk.co.jp

Western Digital Corporation - Investor Relations

18位 nVidia(アメリカ)

GPU大手のnVidiaが登場。現在、CPUの内部にGPUの機能が含まれていることが多いため、一般消費者向けは今や主力ではない。現在の主力はゲーミング用途、プロ用途(3D CADなど)、データセンター用途、自動車用途。一般消費者向けがほぼ消滅したのにも関わらず、売上は上昇傾向。

investor.nvidia.com

19位 AMD(アメリカ)

CPU、GPUシェア第2位のAMD。またPS4、Xbox OneWii UのAPUやGPUに採用されている。ゲーミング用途、データセンター用途、組み込み用途が主力。ただ赤字が続いており、2016年、2017年に投入する新アーキテクチャで巻き返しを図る。

quarterlyearnings.amd.com

20位 ON Semiconductor(アメリカ)

自動車・産業・航空向けアナログ半導体、パワー半導体に強い半導体メーカー。2011年に三洋半導体、2016年にFairchild Semiconductorを買収した。

オン・セミコンダクター投資関連 - ONNN

まとめ

事業

トップ20にはロジック、メモリ、通信、アナログ、イメージセンサなど様々な事業を営んでいる企業が登場し、特にこの分野が多いということはなかった。しいて言うならば、トップ10のうち4社がメモリ関連であった。これはメモリ大手がファブレスではなく工場・設計・販売の垂直統合型の事業であり、設備投資に莫大な負担がかかるため、現在ではDRAMで3社寡占(サムスン、SKハイニックス、マイクロン)、NANDフラッシュで3連合寡占(サムスン東芝・サンディスク連合、マイクロン・インテル連合)となっており1社の割合が大きくなっているためではないかと考えられる。

地域

アメリカが11社、日本が3社、韓国が2社、オランダ、スイス、ドイツ、台湾が1社ずつ。アメリカが過半数を占めており、圧倒的な強さを誇る。半導体が弱いと言われる日本もトップ10に1社、トップ20には3社入っており、意外に健闘している。にもかかわらず弱いと言われてしまうのは、1980年代の驚異的な強さ(1989年のトップ10のうち6社が日本企業)からの凋落や、韓国、台湾などの近隣諸国で半導体産業が強いこと(韓国は主にメモリ、台湾はファウンドリ)などが挙げられそうである。

ファブレス

半導体ファブレスのイメージも強いが、実際は20社中6社のみである。当然この割合は自動車や鉄鋼などの他の製造業に比べると大きいが、ファブレスでないと生き残れない、というほどの割合ではない。ただし、垂直統合型のビジネスモデルだった企業でも、ファブライト化を進めるところ(ルネサスなど)や逆にファウンドリビジネスを開始するところ(インテルなど)もでてきており水平分業に傾きがちな産業ではある。

半導体の入門者が世界半導体ランキングについて調べてみた(1/2)

半導体集積回路の研究室に入ったので、世界半導体売上高ランキングに出てくる企業について調べた。まずは1位から10位まで。

使ったデータ

以下の記事にある2015年世界半導体売上高ランキング(暫定値)のうちトップ20の企業について各社のIR資料を軽く見た。またネット上に転がってるニュースサイトなども参照した。

techon.nikkeibp.co.jp

1位 Intel(アメリカ)

インテルが堂々の1位。首位となるのは24年連続とのこと(1992年以来)。主要事業はパソコン向けCPUだがその成長率はマイナス。現在成長のドライバーとなっているのはデータセンター向け、IoT向け事業と不揮発性メモリ事業(おそらくNANDフラッシュ)。携帯事業は弱い。2015年にFPGA大手のAltera社(アメリカ)を買収した。

2位 Samsung Electronics(韓国)

韓国有数の大企業、サムスンが2位。主要事業はメモリ(DRAM、NANDフラッシュ)。システムLSI事業も行なっている。携帯事業で強いらしい。自社開発のスマートフォンにも自社開発の半導体を用いている。

www.samsung.com

3位 SK Hynix(韓国)

またも韓国企業。主要事業はメモリ(DRAM、NANDフラッシュ)。IR資料を見ればわかるが売上のほとんどがDRAM事業。

https://www.skhynix.com/jpa/ir/irOverview.jsp

4位 Qualcomm(アメリカ)

スマホ向けSoC、Snapdragonで有名なQualcommが4位。CDMA(3G通信規格の1つ)用通信チップを事実上独占している。工場を持たないファブレスメーカー。2014年まで好調だったが、サムスンが通信チップを自社開発してしまったため、売上が急落する。2015年7月にリストラ策を発表。

www.qualcomm.com

techon.nikkeibp.co.jp

eetimes.jp

5位 Micron Technology(アメリカ)

メモリ大手のマイクロンが4位。会社更生法を適用したエルピーダメモリを2012年に買収したことで有名。主要事業はDRAM及びNANDフラッシュ。

http://investors.micron.com/index.cfminvestors.micron.com

6位 Texas Instruments(アメリカ)

またアメリカ企業だ…… アナログ半導体と組み込みプロセッサがメイン商品。売上の31%が産業機器、15%が自動車向け、30%が個人用電子機器向けである。

http://www.ti.com/corp/docs/investor_relations/index.html

7位 NXP(オランダ)

やっとアメリカと韓国以外の企業が出てきたぞ…… 元々はフィリップスの半導体部門。2015年にFreescale社(アメリカ)を買収することによって7位に浮上した。自動車とセキュリティ関連(産業向け?)に注力しているっぽい?

investors.nxp.com

8位 東芝(日本)

ここでようやく日本企業の登場。主力事業はNANDフラッシュ。システムLSIも行なっているが、それほど強くない。上位10社の中で(おそらく)唯一重電部門(社会インフラや発電所など)を持っている企業。

www.toshiba.co.jp

9位 Broadcom(アメリカ)

9位はまたアメリカ企業。有線、無線問わずして通信チップを設計しているらしい。ファブレス。10位のAvago Technologiesに2016年に買収され、新生Broadcomとなった。

Investor Center | Broadcom

10位 Avago Technologies(アメリカ)

10位はAvago Technologies。Broadcomを買収して新生Broadcomとなったので、IR情報がほとんど残っておらずよく分からない。残念。「Avago社はサーバー向けの高速ASIC、スマホ向けのアナログASSPといった戦略商品が好調」と下の記事にはある。

techon.nikkeibp.co.jp

軽いまとめ

地域でいうとアメリカと韓国が強い。

製品ではロジック系(インテルクアルコム)、メモリ(サムスン、SKハイニックス、マイクロン、東芝)と通信系(クアルコム、ブロードコム)に大別できそう。ノイマン型コンピュータだしCPUとメモリと通信に大別出来るのは当たり前か。

事業領域はPC向け(インテル、メモリ各社)、携帯向け(クアルコム、メモリ各社)、サーバー向け(インテル、ブロードコム、メモリ各社)、産業・自動車(テキサス・インスツルメンツ、NXP)に分けられそう。

メモリ、規模大きいなあ……

11位から20位まではこちら。

nakachan.hatenablog.jp